じゃあ、と回れ右して踵を返す。
ここで可憐に走り去れば、今日の私は完璧だ。

ヒールの足を一歩、踏み出、



「ちょっと待って」



踏み出せなかった。司さんの低い声。

私は彼に、腕を掴まれている。何で?



「え、あの、私もう用無しですし!」



彼の力があんまり強くて腕を振り解けず、私は肩越しに振り返った。

あれ。

司さんの眉間に皺が寄ってる。何このちょう不機嫌フェイス!
さっきまで上機嫌だったのに。