そりゃお礼をするのは吝かではないけれど、いきなり身体でなんて!
…と考えたら自意識過剰なのだろうか。

真っ当な女の子なら、普通はここで手を振り解くとかして「最低!」なんて叫んで踵を返して逃げ出すのかもしれない。

だが考えるんだ。相手は王子だ。

どんな理由にせよ、引きの悪い私がこの先、これ以上の大金星を釣り上げることが叶うだろうか。答えは否だ。

今繋いでいるこの手を放したら、私は最大の運を手放す事になるのかもしれない。


いいじゃない。たとえ身体で支払えって言われたって。


一回ぐらい、何てことない。何てこと、……無い。

処女でもあるまいし、こんなに綺麗な彼が私を望んでくれるなら、一晩だけ良い想い出をもらうのも悪くないかもしれない。

そう狡猾に計算する私と、どこかでまだ戸惑う私がせめぎ合う。

頭の中でぐるぐる考えている間にも、彼の足はしっかり繁華街の方に向かっている。

あ、この通りの一本向こうに、ホテル街が有るんだっけ。

いよいよ彼の言葉が現実味を帯びて私に圧し掛かる。