「のーあっ!!」


トン、と後ろから背中を押される。


「ちょ、なにすんの!!」


水跳ねちゃったじゃん、と剥れる私。
ことの犯人である小鳥遊 良(タカナシ リョウ)は素知らぬ顔で笑う。


「そう怖い顔しないでよ。なにやってんの?」

「花の水替えてるの」

「そっか、お前ん家の隣、花屋だっけ」

「隣は関係ないでしょ!」


これは私の女子力なの、と胸を張ると、うっそだぁ、と笑われる。

ほんっとデリカシーの欠片もない奴。


×印その1。デリカシーなさすぎ。


いじけながら花屋のお姉さんに教えてもらったように花の茎を伐っていると、横から手が伸びてきて、ハサミを持っていった。


「貸せよ。選手交代。水冷たいだろ」

「っ……ん、ありがと」


水飲み場にかけてある鏡を見ると、私の顔が真っ赤。


イイトコその1。温度に敏感


暑くなれば扇いでくれる。
寒くなれば代わってくれる。

ホント、無意識なんでしょばーか。