「呼ばれてますよ……?」


「そうだね」


「……行かないんですか?」


「絵理(えり)がその敬語やめたら行ってもいい」


無茶を言う。


これでも頑張っている方なのだ。


こんなイケメンと話した事なんてないから、当然話すだけで真っ赤になってしまう。


恥ずかしいし息が詰まるし何を話せばいいのか分からないし……。


私と居ても面白くないだろう。


私みたいに太ってなくて、可愛くて、会話も弾むような女の子といる方が……。


「丸山(まるやま)さん。琉空の事借りるねー」


「は?おい、放せよ」


「琉空が一番強いんだよ。俺弱すぎてもう3回はテント行ってる」


岡野くんは捨てられた子犬のように私を見つめながら友達に引きずられて行く。


私はホッと息をついた。


「驚きだねー、相変わらず」


「綾(あや)ちゃん……」


岡野くんと入れ替わりで来たのは親友の村瀬 綾(むらせ あや)ちゃんだ。


小学校から一緒にいて、私とはとても気が合う。


ショートカットで眼鏡をかけていて、私とは違って細身の綾ちゃん。


棒のような足を見て私はため息をついた。


「岡野くんは私の何がいいんだろう……」


「さあ?でも良かったじゃん。絵理も好きだったんでしょ?」


「見た目はどストライクだけど……。でも私が付き合っていいような人じゃないのは分かってたし……」


「何はともあれ結果オーライだよ。岡野くんは絵理にゾッコンだよ」


「恥ずかしいからやめてよ、綾ちゃん」


少し綾ちゃんを睨む。


綾ちゃんは楽しそうに笑った。

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