新月の輝くとき

バレンタインの倍返し

今日、三月十四日。

〝ホワイトデー〟などとハイカラな呼び方をする者もいるそうだ。

私は、白いワンピースを身に纏った。

母譲りのダークな黒髪に似合う服が、それくらいしか思い浮かばなかったのだ。

裾がフワリフワリと浮く慣れない感覚に、太腿にむず痒さを覚えた。

普段、適当にあしらっている髪には、丁寧にくしをいれた。

清宮との待ち合わせ場所は、神崎神社の鳥居前だった。

そう急ぐ必要もないだろう、と思いながらも、ちらりと時計に視線をやる。

現在時刻 十時二十五分。

清宮との約束まで、あと五分。

〝五分前行動〟

テレビを消して、立ち上がる。

途端に静まりかえる六畳間に、何故か、緊張感を覚えた。

姿見で自分の格好を再確認する。

〝自身なさそうな顔、してんじゃないわよ。〟

背筋をグッと伸ばし、景気付けに、頬をパンッとはたく。

「よし、行こ!」

外にでた私は、紅鳥居に、清宮の姿を見つけた。

鳥居の柱に気だるそうに身体を預けている。

その姿に、懐かしい笑いがこみ上げた。