新月の輝くとき

バレンタイン
(エアラブより、修正加筆少しあり)

「そのまま、前向いててよ」

ある日の帰り道。

私、神崎小夜は、歩を緩め、清宮の少し後ろの位置を歩いた。

そして、目の前の背中に、普段より三割増し大きな声をかける。

「清宮、一回しか言わないから、よく聞いてなさいよ!」

「あぁ」

清宮は、小さく頷くのを確認して、私は、言う。

「ありがとね、色々とさ」

語尾が雑になってしまったのが、少し気になる。

「は?何?どうした?」

私の渾身の感謝に、清宮は〝疑問符三点セット〟で返してきた。

「失礼ね、私だってお礼くらい言うわよ!」

前を歩く清宮の後ろ姿をキッと睨みつける。

そして、ほんの少しだけ歩を速め、清宮に近づいた。

その一瞬の隙に、だらしなく半開きになった彼の通学鞄に桃色の小包を素早く滑りこませる。

私の一週間遅れのバレンタイン。

あなたが気づくのは、もう少し後。