しかし、手首に感じたのは、空を斬る感覚だった。

その感覚に安堵した私は、結城に笑いかけた。

———〝妖刀 新月〟は、妖のみを斬る刀です。〝悪〟しか斬ることは出来ません。〝善〟を斬った時の代償は、大きいですよ

脳裏に牡丹の言葉が蘇る。

〝代償〟に不安を覚えたが、考えてもしょうがないよな、とブンブンと頭を振る。

「やっぱり、斬れないね。あんたは、良いヤツだよ。なんとなく、気づいてた」

何も言おうとしない結城に、私は、静かに続ける。

「どうして、酒呑童子の神社に火を放ったのか聞いてもいい?」

「酒呑童子の事件の発端は、人間なんだ…」

結城の話によると、あるテレビ屋が〝鬼〟の撮影のために興味本位で山に入ったらしい。