張り詰めた緊張感で私と結城が対峙する中、その雰囲気をぶち壊すような拍子抜けした呑気な声が飛び込んできた。

語尾にハートマークがピョンピョン飛び交うその声は、恵のものだった。

「結城くぅん♡クッキー作ったよぉ♡一生、結城くんのお家に誘ってもらえることないと思ってたから嬉しくて……小夜?」

恵の声が途切れる。

どうして、恵がここにいるの…?

私と恵は、黙ったまま、見つめ合う。

結城が吐き出すように言った。

「今日、恵と約束してたんだ」

「小夜?何で、また、結城くんに刀を向けているの?」

恵が覚束ない足取りで私に近づく。

結城が懇願するように言う。

「またにしてくれないか?神崎、頼む」