牡丹は、ほんのり紅い瞳を私に向けた。

その哀愁を漂わせる儚げな瞳に私は、牡丹の華を見た。

牡丹は、ぽつりと呟いた。

「本当に…それでも…人は、人を愛してしまうんですよね」

「知ってます」

牡丹の瞳が大きく見開かれて、私に向けられる。

私は、言葉を繋いだ。

「結ばれるはずがないと分かっていながら、悪行妖狐に必死に想いを寄せる友人がいるんですよ」

「そうなんですか」

牡丹は、何処か遠くを見つめるように、目を細めた。

私は、言った。

「〝妖刀 新月〟は、その強き愛ゆえに妖のみを斬る…だったら、助けてください」