新月の輝くとき

いくらかの沈黙の後、私は、ゆっくりと口を開いた。

「ここからは、私の推測ですが…遠い昔、明石朱正さんのご友人の妻を殺害したのは、〝妖刀 新月〟いえ、それに取り憑いたあなたではないですか」

牡丹の毅然としていた細い声が震えだし、その目元からは、後悔の念が溢れ出した。

「えぇ、そうなんです。その方を朱正さんの新しい想いの人と勘違いしてしまって…馬鹿ですよね、私。もう死んでだというのに…本当に未練がましい」

私は、静かに続けた。

「その後の朱正さんの戦での大勝も、あなたの力ですよね」

牡丹は、うなだれるように小さく頷くだけだった。

その牡丹の明石朱正への強い執着に、私は、狂気にも似た恐怖を覚えた。

思わず、心の声が漏れる。

「人を愛するって怖いですね」