新月の輝くとき

日が高く昇ってしまう前に、私は、天狗の老人に別れを告げた。

私は、山道を下りながら、私の帰り間際に老人が語った話をふと思い起こしていた。

「お嬢ちゃん、一つ言い忘れたことがあったよ。口伝だから、詳細は、よく分かっていないのだが…」

〈〝妖刀 新月〟は、その強き愛ゆえに妖のみを斬る。〉

天狗の老人、大天狗の話によると、そう伝わっている地域があるようだ。

考えを巡らせていると、前方に白い着物の女が佇んでいるのが見えた。

彼女は、伏せ目がちに、何処かはずれた調子の歌を口ずさんでいた。

悔しいが私より、数百倍は、美人である。

その女は、私に気がつくと〝牡丹〟と名乗った。