新月の輝くとき

「愚問ね。私、人に褒められるような行いは、何もしていないわ。だから、私が来るところは、地獄って決まってるの」

私は、炎に揺れる見慣れた自分の顔をぼんやりと見つめて、嘲笑った。

天狗の老人は、気のない返事を返すと、目尻のシワを下げ、優しい微笑みを浮かべた。

「ふむ、そうかい。それから、お嬢ちゃんに聞きたいことがあるんだが、少しいいかね?」

「えぇ。」

私は、小さく頷いた。

天狗の老人は、私の足元を指差してたずねた。

「お嬢ちゃんの刀は〝妖刀 新月〟かね?」

驚いた私は、天狗の老人の大きすぎる瞳をまじまじと見つめていた。

「私のは〝妖刀 望月〟よ。それはともかく〝妖刀 新月〟を知っているの?」

「あぁ、知っとるよ。わしが人間の男に与えたものだからな。」

天狗の老人の言葉に思わず身を乗り出してしまう。

「〝妖刀 新月〟について知ってる事、教えて下さい。」

天狗の老人は、不思議そうに首を捻った。

「ふむ、お嬢ちゃん、そんなに大切な事なのかい?」

「えぇ、とても」

「じゃあ、三日、わしの所で働いてくれたら教えようかのう。もうすぐ祭りがあるんだが…その準備が老人には辛いものがあってな。」

「わかりました。」

私は、了承すると、もう一度静かに身体を横たえて、目をつむった。