しかし、その身体に、深傷は一つも見当たらなかった。

「何故、俺に刃を向けなかった!?」

清宮の怒鳴り声が、ぼやける視界の中で自らの手を見つめる私の耳をつんざく。

しかし、何より驚いていたのは、私自身だった。

〝妖刀 望月〟が清宮の身体に刃を入れる直前で、私は、手首を捻り、刃のない棟の方で清宮を斬ったのだった。

どうして?

どうして?

どうし…

思考が途切れ、私の両手が霞み始める。

一時は、完全に忘れていた背中の痛みがぶり返してきた。

「負けたわ、清宮。」

私の意識がプツンと途切れた。