新月の輝くとき

結城は、ここまで苦いチョコレートが好きだと言ったのだろうか。

恵のチョコレートは、市販のカカオ八十パーセントのチョコレートをゆうに超えるような驚異的な苦さだったのだ。

結城は「ほろ苦いチョコレートが好きだ」とそう言ったのではないだろうか。

私の心で〝心配〟が成長を続けていたが、恵の可愛い笑顔を見たら〝無用な心配事〟だと片付いた。

今日の恵は、かなり縛りが厳しい我が高校の校則の中、色付きのリップクリームなどを使って目一杯めかしこんでいる。

「こんなに可愛い恵のチョコレートに、文句を一つでもつけたらどうなるかわかってるんでしょうね?」

私は、頭の中の結城を鋭い目で睨みつけた。

「小夜、寝不足みたいだけど、ちゃんとした睡眠は、とらないとダメだよ?じゃ、私、結城くんにチョコ渡してくるから。」

恵は、軽い注意を私に促すと、緊張じみた固い表情を作った。