新月の輝くとき

数分が経ち、夢の世界へ引きずり込まれそうになったところに恵の声がかかった。

「小夜、起きて!こ、これ、味見してくれない?」

そう言って、恵が私に差し出したのは、やはりチョコレートであった。

私は、気だるい身体を起こして、恵に向ける。

「あぁ、結城くんにあげるの?オッケー、どれ味見すればいいの?」

「まずかったら、包み隠さずにまずいって言ってよ。」

おかしな忠告を受け流しながら、私は、チョコレートを口に運ぶ。

そして、口に入れた瞬間〝人の忠告には真剣に耳を傾けるもの〟だと学んだのである。

何故か強烈な苦味な舌を襲ったのだ。

口の中の水分が搾り取られていく。

「恵っ!このチョコレート、苦すぎるんだけど。」

その言葉が口について出た瞬間に、言い過ぎてしまった、と後悔した。

しかし、私の心配とは裏腹に、恵は満面の笑みを浮かべたのだった。

「そう、そうなの!苦く作ってみたんだよ。結城くん、甘いのダメなんだって。」