新月の輝くとき

私は、その日、学校からの帰り道を歩いていた。

「バレンタインッが近づいて〜♩」

私は、クルリクルリとまわりながら、甘さを漂わせる歌を口ずさむ。

周りの景色に斜線が入り、少し歪んだ。

眉をひそめる大人や、私の歌に肩を揺らす子供の顔も歪み出した。

「おいっ、神崎!ここは、道のど真ん中だぞ。公共の場所で迷惑かけるようなことすんな!」

後ろから聞こえた声に、深く肩を落としながらも振り返る。

「明日のバレンタインの主役の清宮くんじゃん。」

「うわ、明日ってバレンタインだっけ?チョコとかすっごい迷惑なんだよ、毎年、毎年…」

不平不満を垂れ流す清宮の耳元に囁く。

「ねぇ、あの人の前でそういうこと言える?」

そう言って、私が、指さしたのは、丸刈り眼鏡という昭和臭を漂わせる学生だ。

いわゆる〝バレンタインって何?それ美味しいの?〟とブツブツ呟いていそうな男子学生である。

「うぅ…」

清宮が唸る。