「小夜…お願い、彼を助けて。妖とか私にはわかんない。彼が何をしたかもわかんない。でもね、あのトラックの交通事故のとき、助けてくれたのは、結城くんだと思うんだ。」

恵の澄んだ瞳から、ポロポロと綺麗な水の粒がこぼれ落ちる。

結城晃が叫ぶ。

「違う!俺はお前を助けてなんかいない。俺はあの時、勘違いした。お前とずっと昔好きだった女と勘違いしたんだ!」

酷い罵声を浴びせられながらも、恵は、小さく微笑んだ。

「それでも、助けてくれたことには変わりない。私が、あなたを好きになったことは事実だもの。」

しかし…

「止めてくれ、そういうの。」

結城晃が喉の奥から必死で絞り出すように苦しそうにつぶやく。

その瞬間、恵の大きな瞳がショックに見開いた。

頬に冷たいものを感じた。