正直いうと私の頭の中には、朝、清宮と練習したということだけしかなかった。

私の頭の中では、歴史の教科書がパラパラとすごい速さでめくられていく。

—牛若丸は、源義経と同一人物であり、弁慶を手下として平家討伐に尽力した人物である。

その一節をなんとかひねり出してきた私は、言葉に変えていく。

「おぉ、弁慶殿ではないか!平和が一番でございます。一緒に平家討伐に参りましょう。」

弁慶役の人の顔が怖い。

「神ざ…じゃなくて清宮。お前から見て五列目の前から十二番目に妖狐の気!かなり強力だ。」

その時、美人版神崎小夜にはアンバランスな低い声が体育館内に響き渡った。