それが君の願いなら。



4限目終了のチャイムが鳴り終わると雅ちゃんがあたしの机の前に来た。


「ほら!早く行ってこい!」

「えっ、今行くの?」

「そうでしょ! ほら〜!」

「ちょ――!」


せめてお昼食べたい…!


これでもお腹空いてるんだから〜。


あたしの願いも虚しく図書室の道中まで連れて行かれてしまう。


「ちょ、待って雅ちゃん! まだ侑菜にも言ってない!」

「侑菜ちゃんには雅から言っとく」

「そ、それくらい自分で…」

「まぁいいから行けって。イケメン彼氏待ってるかもしんないじゃん!」

「……うーん…」


気のない返事をしてあたしはスタスタと図書室まで歩く。


雅ちゃんに言われて一応お弁当も持ってきたけど、侑京は何も持って来てない可能性だってあるわけだし、早とちりし過ぎなんじゃ…。


そんな事を考えながら図書室を開けると侑京はまだ来ていない様子。


うーん…仕方ない。


しばらく本でも読んでようかな。


お弁当以外何も持ってきていないあたしは好きな本を探しながらウロウロする。


オススメの本は――…、ミステリー系かぁ…。


面白そう……だけど、この作家さんあまり好きじゃないんだよね…。


なんて1人で考えていたせいか、隣に誰かが来たことにも気付かない。


「しーのーさん?」

「う、わぁあ!」


瞬時に身の危険を察知し、相手に一発お見舞いしそうになった時、その相手が侑京だと気付いた。


「――あ、あれ? 侑京?」


あたしの声に侑京はビックリしながら苦笑中。


だけどしっかりあたしの手を掴んでいるあたり、本当に反射神経の良さを思い知らされた。


「ごめん、遅れた」


そう言って申し訳なさそうな侑京にううん、と首を振る。


「あたしが雅ちゃんに促されて早く来すぎただけだから」

「こんな遅くなるはずじゃなかったんだけどな…」

「気にしなくていいよ。あたしお腹空いた!」


侑京にそう言うと俺もーって返される。


お弁当持ってきて正解だね。なんか、流石雅ちゃん…?


1人思い出しながらクスッと笑えば侑京に突っ込まれてしまった。


「実は雅ちゃんにね――、」


この短時間の間の出来事を一部始終話せば侑京もクスクスと笑う。


「さすが百木先輩、だな」

「だよねー!」


初めて2人で食べるお昼は本当に楽しくてずっと笑ってた。


先生はいないみたいだったけど、2人の方が気負ったりしなくて逆に良かったのかもしれない…。


――誕生日だって事も知らないみたいだし、このまま黙っとく方がいいよね…。


1人小さく頷き侑京と話しながらお弁当を進める。


あたしより少し早く食べ終えた侑京はあたしを見ながら何故かニヤニヤしてる。


「……? 何?」


首を傾げながら聞くとニヤニヤしたまま応えてくれた。