それが君の願いなら。



向けられた画面の向こうには、


《誕生日おめでとう、凌ちゃん》


それだけの言葉。


だけど送り主を見て思わず目を見開いてしまう。


《莉人より》


メッセージの少し下に確かにそう書かれてあって。


それだけであたしの目頭は熱くなる。


鼻の奥がツンとして、本当に涙が零れた。


だって、嬉しすぎるに決まってんじゃん…。


泣くあたしに侑菜は優しく微笑みながら言った。


「この前榊と3人で会った時のこと、莉人くんに聞いたよ」


……うん、そうだと思った。


あたしはあの日のことを誰にも言ってない。


ただ、3人で会うことしか伝えてなかった。


侑菜にも言わなかった。もちろんなっちゃん達にも言ってない。


言おうかなって思ったんだけど、迷ったの。なんて言えばいいのか分からなかったから。


話した内容とか、出来事を伝えればいいと思うんだけど、それだけじゃダメな気がして…。


あたしが莉人くんとしてしまったキスのこと。


莉人くんに告白されたこと。


侑京に宣戦布告されたこと。


あたしはどれも言えないと思ってしまった。


「あたしの想いが、ちゃんと固まってないの…」


あたしの言葉に侑菜を含め3人が息を呑むのが分かる。


―――そりゃそうだよ。


今更こんな事言うなんて卑怯にも程があるよね…。


あたしは今侑京と付き合ってる。それなのに気持ちが固まっていないなんて……。


ホント、どうかしてる。


だけど3人は何も言わない。


「今日が誕生日だからってのもあるけど、凌ちゃんの気持ちが固まったらちゃんと聞かせて?」


そう言ってくれるなっちゃん。


長い付き合いだから言いたいことも文句もいっぱいあると思うんだけど、今日だから大目に見てくれてるんだろうね。


「雅も言いたいことは沢山あるけど、凌ちゃんの気持ちを否定しようとかは思ってないから」


……うん、分かってる。ありがとう。


雅ちゃんも普段はあたりキツかったりするけど、あたしの事考えてくれてるって分かってる。


だからありがとうしか言えないよ。


「侑菜は、凌が傷付かないならそれでいい。侑菜が言えることじゃないけど、凌の一番の味方だから」


「……っみんな、ありがとう…」


こんな時に。誕生日にそんな言葉を貰うと余計に涙が出るんだね。


「侑菜」

「何?」

「――莉人くんのLINE教えて」

「……分かった」


莉人くんにも、ちゃんとあたしの言葉で、お礼を言いたいから。