「そんなお願いなら、いくらでも聞くけど」
「――!ほ、ホントですか!?」
「ホントですよ」
「や、やったぁー!」
両手を上げて喜ぶあたしに侑京も莉人くんも声に出して笑い始める。
ハッとしたあたしは瞬時に手を下ろしたけど。
「お待たせしました〜」
3人分のドリンクが来たって言うのに2人は笑いっぱなしだし、あたしは恥ずかしくて赤面状態だし…。
ほら! 店員さん、今若干首傾げたよ!
それぞれのドリンクを受け取ったあたしは2人に文句を言う。
「もう侑京!笑いすぎだってば!」
「ははははっ!…いや……だって凌っ…!」
そ、そんなに笑うことないのに……!
ガーンって言葉が似合いそうな今のあたしの状況。
侑京にこんなに笑われたのは初めてかもしれない…。
あたしと侑京の目の前で笑ってる莉人くんにも文句を飛ばした。
「莉人くんも笑い過ぎ! こんな場所でそんなに笑う人じゃなかったのに…!」
「いやいやいや…っはは!」
な、何がそんな2人のツボに入ってるの…?
意味が分からなくて諦めたあたしは仕方なくミルクティーを一口飲んだ。
いつからか大好きになってたミルクティーを一口飲むだけで心が安らぐようになった。
ミルクティーの効果なんて正直知らないけど。
笑ってる2人を見てあたしまで嬉しくなった。
「あはははは!」
だから自然と笑顔になって、笑っちゃうんだ。
侑京への罪悪感はまだ拭えていないけれど。
莉人くんへの気持ちが零れそうになっているけれど。
あたしは今、幸せだと感じるから。
この瞬間も、今の一瞬も、不思議な3人で笑ってるこの時間も楽しく感じるから、それでいいや。
優柔不断なあたしでごめんなさい。
侑京にも、莉人くんにも、ごめんなさい。
本当は今すぐにでも出さなくちゃいけない答えがここにあるはずなのに。
何も言えないあたしを責めないでいてくれてありがとう。
きっと2人共今すぐ聞きたいことがあるはずなのに、あたしん気遣ってくれてるんだよね。
分かってる。分かってるよ…。
だからあたしはちゃんと答えを出さなくちゃいけない。
今すぐには無理だけど、ちゃんと考えるから。
もう一度、莉人くんの事だって考える。
自分の気持ちを、侑京への想いを、莉人くんの告白を――…。
ちゃんと、素直になるから。
「侑京、莉人くん、ありがとう。……ごめんなさい…」
あたしの言葉に2人は目を見開いた。
「俺は、凌が出した答えならなんでも受け止めるから」
「うん…ありがとう、侑京」
「凌ちゃんが言いたいことをそのまま伝えればいいから」
「ありがとう、莉人くん」
あたしは、やっぱり幸せ者なんだ…。
だけど、こんな2人をどちらか必ず傷付けてしまうあたしは、やっぱり誰より、最低な人間だ――…。
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