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トイレから出ると侑京と莉人くんは何事も無かったかのように笑いあっていて驚いた。
「凌、落ち着いた?」
少し緊張気味に侑京の隣に座ると侑京があたしに聞いてくる。
その言葉に泣いていたのがバレバレだったんだなって。
そりゃそうだよね。きっと10分くらいトレイにいたと思うもん。
確認したけど、目はやっぱり少し赤くて。
2人みたいに何事もなかったかのような振る舞いはできないけど、今出来る限りの笑顔で「大丈夫だよ」と答えた。
それから何も頼んでいなかったことに気付いたあたし達は、それぞれドリンクを頼んだ。
「ココアとミルクティー1つずつ。莉人くんは?」
「んー……俺は…。じゃあ、レモンティーで」
それぞれ頼んで待つ間は沈黙だった。
もちろんあたしは気まずくて何も言えない。
だけど2人は特にそんな様子はなかった。
ただ、話す話題がないって感じで、至っていつも通り。
「―――あ、」
「「え?」」
何かを思い出したような様子の侑京にあたしと莉人くんの声が重なった。
侑京? どうしたんだろう、一体…。
何故だか不安になるあたしに侑京が言った。
「凌、莉人くんに言いたいことあんだろ?」
「え、えっ?」
そんな事あったっけ…?
侑京の言葉に色々考えを巡らすも特には思い浮かばなくて。
「ほら、また仲良くなりたいつってたろ?」
「――…あっ!」
思い出したあたしは急に恥ずかしくなってつい俯く。
だ、だって! こんなところで言わなくたっていいのに…!
「何それ? 凌ちゃん?」
知らないふりをしてやり過ごそうとしたあたしに莉人くんが聞いてくる。
あー……どうして気にしちゃうの…。
チラッと莉人くんを見れば本当に意味が分からない様子で首を傾げている。
うぅー……。
「じ、実はね…あの、えっと〜……」
恥ずかしくてなかなか言い出せないあたしは侑京にバトンパス。
「う、侑京〜」
「…今日はダメー。自分で言いなさい」
「は、恥ずかしいもん…」
もじもじするあたしに笑いながら侑京が「頑張れって」と言う。
――いつもなら助けてくれるはずの侑京が今日は冷たい!
だけどコレはあたしの口から言わなくちゃいけないことを自分でも重々承知してる。
「あのね、莉人くん」
「ん、何?」
「あ、あたしね、また莉人くんと仲良くなりたい……の、です」
消え入りそうに言うあたしに今度は莉人くんが笑った。


