それが君の願いなら。



莉人くんと抱き締め合って、キスをして、あたしの心は罪悪感でいっぱいだった。


侑京になんて言えばいいんだろう――…。


今あたしが何を言ったって全部言い訳に聞こえちゃうんじゃないかな。


そう思って、怖くて。侑京がお店に戻って来てからもあたしは侑京に何も言えなかった。


「……莉人くんに、話があります」

「…ん」


あたしを他所に2人で話を始める侑京と莉人くん。


お店に入ってきてから侑京はあたしを見ようしない。


まるで全部分かってるみたいに。


だけど怒ってる様子はなくて。


ただ、目の前にいる莉人くんを逃がすまいとしているみたいだった。


ずっと下を向いているあたしの手を侑京は一度握ってくれた。


その手の温もりが、優しさが、あたしの涙腺を弱くする。


「……っ…」


泣く理由なんてない。


侑京に心配かけちゃう。ダメ。泣くな。


自分に言い聞かせて涙を堪えた。


「…莉人くんは、なんで浮気したんですか……」


侑京の言葉に莉人くんは黙ったまま。


あたしは何も言えなくて。今の侑京の言葉に、侑京に、謝り続けることしか出来ない。


「――…菜乃花は、俺にとっても幼なじみで、」


静かに話し始める莉人くんの言葉に侑京と一緒に耳を傾けた。


あたしも初めて聞く、莉人くんのあの時の本当の想い…。


「普段は明るくて強いくせに、ちょっと苛立ったり泣いたりするとすぐ自分を傷付ける奴だってことを、多分周りはみんな知ってた」


――…そう。


本当に莉人くんの言う通り。


菜乃花はいつも明るくて、周りにたくさん人がいた。だけど相手の弱い部分をズバッと言っちゃうところがあって。


だから友達との言い争いもよくあって。


あたしや莉人くんは昔から知ってるし抑えるように言い聞かせた。


菜乃花に何か言われても流せたし、喧嘩になっても本気でキレたりはしなかった。


――ただ、相手が友達だと分かってもらえない部分があって…。


あたし達は分かってる。性格も、行動も、言動も。


だからあたし達の前で菜乃花が自分を傷付けることは一度もなかった。


だけど友達にイラついたり喧嘩した時。モノじゃなくて、自分の爪で自分を傷付けた。


イライラしながら。あたしや莉人くんが話を聞いても収まらなくて。


どうしようもなかったことを、周りはみんな知ってた。


だから莉人くんは――…。


「凌ちゃんと付き合ってた時、そんな状態の菜乃花に会ったんだ。公園で話を聞いてて、告られたんだ…」

「……それで、キスされたんですか?」

「………うん」

「それで、自分からキスしたんですか…?」

「――――……うん」


莉人くんの言葉に無意識に涙が溢れた。


初めて聞いた莉人くんの思いは、やっぱり優しさから来ていたもので。