それが君の願いなら。



きっとごめんなさいはあたしのセリフなんだよ…。


いつだって優しい莉人くんだから。あたしがちゃんと気付かなくちゃいけなかったんだよ。


だから、あたしの方がごめんなさい…。


莉人くんは悪くないなんて言えるほど大人じゃない。だけど、悪いのはあたしもなの。


だから謝らないで――…。


抱き着いて泣くあたしの背中を莉人くんは優しく摩ってくれる。


小さな子供をあやすみたいに、優しく。


「今、侑京いないから言うけど」

「………うん」

「俺、ずっと凌ちゃんが好きだよ」

「…………っ、」

「一度も忘れたことない。本気で、ずっと好きだ」


莉人くんの想いが抱き締められてる分、ひしひしと伝わってくる気がする。


それと痛いくらいに感じる、侑京への罪悪感。


あたしを信じてくれてる侑京に申し訳なくて…。


莉人くんと抱き締め合ってるあたしを見たら幻滅しちゃうかな……。


そう考えるも、莉人くんを離したくないと思う自分もいた。


だけど、今だから言うよ。


本当はね、あたしもずっと。


「……莉人くんの事忘れたことないよ…」


忘れるわけない。


忘れられるわけない。


忘れるなんて、出来ない…。


だって、誰より好きなんだもん。


誰より好きだったんだもん…。


本当に好きで。大好きで。誰より大切だった。誰より失いたくなった。


あたしの、全てだったんだよ――…。


「…凌ちゃん」

「……ん?」

「ごめん…」


謝る莉人くんに何が?、そう聞きたくて聞けなかった。


聞く前に、口を塞がれてしまったから。


「――〜っ……」


抵抗しようとしたのは一瞬で。


気が付けばあたしは莉人くんに身を委ねていた。


……あぁ、最低だ、あたし。


莉人くんと付き合ってた頃、莉人くんにされて嫌だった事を今あたしはしてるんだ…。


こんなお店の中で、堂々と。


ごめん、ごめんなさい、侑京……っ…。


何度も何度も謝る。


「……っ…」


唇が離れた時、あたしは泣いていた。


「…ごめん。また、泣かした…」


そう言ってあたしの涙を親指で拭う莉人くんに首を振る事しか出来なくて。


結局はあたしも最低なんだ――。


だって、莉人くんに「ずっと好きだ」って言われて嬉しかった。


あたしもずっと好きだよって思った。


侑京が好きなのに…。本当に、好きなのに。


莉人くんが大切で、好きなことにも変わりはなくて…。


あたしは、どこまで行っても最低だ…。