それが君の願いなら。



それだけの事でどうして泣きたくなるのかな。


あたし、やっぱり今日来るべきじゃなかったのかもしれない…。


だって、莉人くんに会っただけで泣きそなんだもん…。


侑京には悪いけど、今でも心のどこかで莉人くんを大切だって思ってるあたしがいるの。


後ろめたい気持ちなんてない。


そう言える、言い切れる。


クイッと侑京の服の裾を小さく引っ張った。


「少しだけ、莉人くんと2人にしてくれない、かな…」


あたしの言葉に侑京は同時もせず頷いただけだった。


侑京がお店を出る時あたしのスマホが震えた。


《言いたい事全部言っとけ。頑張れ》


そう言ってくれた侑京に涙が出そうになる。


《ありがとう。終わったら電話するね》


そう返信してあたしは莉人くんと向き直った。


ねぇ莉人くん。


今だけは本音を言わせて下さい……。


「……っ…莉人、くん…」

「…ん?」


涙が出そうになるのを必死に堪えながら莉人くんの名前を呼ぶ。


きっとあたしの涙に気付いてる。


昔からそうだったもん。


どれだけ小さなあたしの声にもちゃんと反応してくれて。


自分ではちゃんと笑ってるつもりでも本当の気持ちを分かってくれてて。


あたしが好きになった田宮莉人は、そんな人――。


「…ずっと…っ…会いたかっ……たっ…」


零れた言葉。


溢れた想い。


本当はずっとずっと、莉人くんに会いたかった――…。


「……俺も、会いたかった…」

「――…っ!」


そう言って泣きそうな顔で優しく笑った莉人くん。


違う…。あの頃の莉人くんは、あたしの知ってる莉人くんは、そんな泣きそうな顔で笑ったりしなかった――。


そっか……。あたしが莉人くんを変えちゃったのかな…。


ごめんなさい。ごめんなさい…っ。


謝り続けるあたしに莉人くんが静かに席を立つ。


「――っ」


隣に来た莉人くんがあたしを抱き締める。


2年ぶりの温もり。


2年ぶりの莉人くんの優しさ。


2年ぶりの莉人くんの心臓の音。


どれもこれも懐かしくて、切ない…。


抱き締める莉人くんの腕は震えてる気がした。


「凌ちゃん、ごめん…。俺、ずっと謝りたかった……。何回謝っても謝っても足りないって分かってんだけど…」


悲しそうに、今にも泣き出しそうに話す莉人くんをあたしは見てられなかった。


「莉人くん……っ…!」


お店の中だってことも忘れて。周りに人がいる事も忘れて。


―――莉人くんしか見えなくて…。


あたしは莉人くんに抱き着いた。