―――心臓の音がバクバク言ってる…。
「凌、顔色悪くね?」
「ぅえっ!? だ、大丈夫!…だと思う…!」
侑京の言葉にドギマギと答えるあたし。
とうとう今日莉人くんと2年ぶり会う。
あたしは莉人くん家で会おうと思ってたんだけど、莉人くんが別の場所にしようって言ったらしくって…。
だから今あたしと侑京はいつも行くカフェにて莉人くんを待っているところ。
2年ぶりって……。自分でも思うより長かったからかな。
本当に緊張してる…。
「う、侑京…?」
隣にいる侑京をチラッと見ると、いつもと同じ爽やかな顔をしたまま。
「……余裕ですか…?」
「なわけねぇじゃん」
「でもお顔がいつもと同じですよ?」
「凌といるからじゃない?」
「んなっ〜〜!」
お、お口までいつもと同じですよ!
どこまで余裕なんだ…!
年下のはずの侑京といると実は同級生か年上なんじゃないかって錯覚に陥る。
それくらいいつも落ち着いてて余裕がある侑京。
――…そんなところも大好きなんですが…。
むむーっと下を向いて呼吸を整えていた時。
「凌ちゃん…?」
―――懐かしい声に、体が震えた。
「り…ひと…くん……」
いつも普通に口にしていた言葉。今だって本人の目の前じゃなければ普通に口に出来るのに。
どうして今になって緊張してるんだろう…。
自分でも不自然なくらい声が上擦ったと思う。
顔を上げて2年ぶりに会った莉人くんはあの頃より少し大人になってて――。
顔付きも、体付きも大人で。 声も、なんとなくだけど、低くなってる気がする…。
莉人くんを目の前にして涙が出そうになった。
そんなあたしに気付いてか気付かずか、侑京がサッと立ち上がった。
「莉人さん、初めまして」
「あーえっと…榊……くん、だっけ?」
「"侑京"でいいですよ」
「俺も"くん"でいいよ」
2人で少し笑い合いながらお互い席に着く。
あたしと侑京の前に座った莉人くんに、なんて言えばいいの分からない。
本当はもっと普通に接してるはずだったのにな…。
もっと、昔みたいに、何も無かったみたいに接してる予定だったのに…。
少し後悔しながらあたしは笑って莉人くんに話しかけた。
「ひ、久しぶりだね!」
「――…おぅ、久しぶり」
「元気だった?」
「うん。凌ちゃんは?」
「………っ、元気だったよ」
何も変わらない様子の莉人くん…。
―――ううん、違う。
目の前には"あたしの知ってる"莉人くんがいる――…。
あの頃と変わらない、莉人くんがいる…。