それが君の願いなら。



手を繋いだままスマホを触っている凌。


小さい手に収まり切れていないスマホ。


「…あそこのカフェ入るか」

「あっ、うん!」


そう言って近くのカフェに入る。


窓際の席に座り俺はココアを、凌はミルクティーを頼んだ。


スマホをずっと触っている凌は篠倉先輩とLINE中。


少ししてスマホから目を離した凌が俺に言ってきた。


「侑菜が言うには、莉人くんは8月中旬に帰って来るって!」

「俺もなんとなくその頃だと思ってた」

「どうする?帰って来てすぐ会う?」


凌の質問に俺は悩んだ。


すぐ会うって言っても言いたいこと纏めとかないとな…。


言いたいことは既に決まっているとしても、聞きたいことはちゃんと纏まっていない。


そんな事を考えながら悩む俺を見て凌は笑う。


「その時に思った事を言えばいいんじゃない?」


俺の脳内を見透かしているらしい彼女はクスクスと笑っている。


だけど凌の言葉に納得し、俺はとりあえず頷いておいた。


「すぐ会うにしても莉人さんに合わせるよ」

「ん、分かった。侑菜に伝えておくね」


そう言った時だけど、篠倉先輩に言うより航大にLINEした方が早くないか?


学校同じだし、幼なじみなら尚更。


気付いてないらしい凌にそう言うと「あー!」と言っていた。


その時の凌の顔に俺はひたすら笑った。


付き合い始めて分かった凌のことは本当にたくさんあって。


その中でも1番感じるのは喜怒哀楽が激しいこと。


本人は隠してるつもりっぽいけど、全然隠し切れてねぇし。


百面相みたいにコロコロ変わる表情が本当に可愛い。笑顔がすっげぇ可愛くて。でもたまに見せるふとした一面は心を奪われるくらい綺麗で。


これだから目が離せないんだよな…。


ずっと笑っている俺に怒りながら凌が言う。


「もう、笑い過ぎ!……航大に今LINEしたよ」

「ははっ、はー、笑った! …ふっ、航大なんて言ってんの?」


目の前の俺にプーっと頬を膨らませる凌。


「ぷっ! それ、可愛いだけじゃん」

「〜〜っ! こ、航大がね、"莉人くんは8月末がいいって"だって」

「8月末ね、俺は大丈夫」

「あたしも大丈夫だよ」

「じゃあオッケーしといて」

「はーい」


これで莉人さんと会えるのか…。


もう少し先の予定にドキドキしながらもどこか楽しみで。


凌がいてくれるから大丈夫――。


俺の目の前に凌がいるように、凌の目の前には俺がいる。


それだけで充分だ。


こうして笑ってられる毎日に、凌がいてくれれば――…。

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