それが君の願いなら。



俺の質問に凌はぎこちない笑顔で首を横に振った。


「嫌じゃないよ。ただ、少し不安だなって」

「何が1番不安?」


俺の問いに少し悩み、答えた事。


「侑京と莉人くんが喧嘩しないかなって…」

「…え?」


凌の言葉は、答えは、いつだって俺の予想を上回る。


きっとこうだろうと考えていたモノは簡単に崩されてしまう。


驚いた俺の顔を見て凌は笑った。


「あははっ。あたしね、どうしても莉人くんを恨むことは出来ないから…」


そう言った凌の言葉にどこかで嫉妬しながらも、その笑顔で全てを許してしまう。


だって、そんな可愛い笑顔でそんな事言われたら何も言えねぇよ…。


「それとね、もし莉人くんに会いたいなら直接会いに行こう?」

「―――えっ…、は?」

「え?」

「えっ…どう言う…?」


凌の言葉を理解しきれない俺は聞き返すけど、何故だか凌まで首を傾げている。


いやいや、それ俺の反応なんですが。


「直接会いに行くって、どういう意味?」

「あ、それね。そのままだよ。莉人くん家行こうってこと」


えっと……それ、気まずいの俺より凌じゃねぇの?


そう思うけど、凌は平然としていて。


その反応にまた俺は困ってしまう。


「気まずくね?」

「あたし?」

「しかいませんよ?」

「侑京がいるから大丈夫ですよ?」


………この天然小悪魔め…。さっきは俺と莉人さんが喧嘩しないか心配だとか言ってたくせに。


矛盾してんじゃん…。


そう思いながら凌の言葉が素直に嬉しくて俺は笑った。


「俺も、凌が平気なら平気かも」


そう言うと意味が分かってない様子で首を傾げた。


その反応に俺はまた小さく笑って。ずっと気になっていた質問をする。


「凌は別れてから莉人さんと会ったの?」

「うーん……会ってないと思うけど…」

「……会いたいって思ったことは?」

「別れてからは1度だけ思ったよ」


――やっぱり思ったのか…。それが悪いことだとは思わない。凌の気持ちだし、俺がとやかく言う筋合いもない。


ただ、少しダメージは食らったかな…。


でも今付き合ってるのは俺だし。莉人さんにも負けねぇし。


「予定は凌に任せる」


そう言った俺を見て凌は、


「侑菜に仲介してもらうね」


そう言って早速スマホを取り出した。


行動が早い凌だから、莉人さんとも近いうちに会うことになるんだろうな…。


そう思って思い出したこと。


「……K高って、全寮制だったよな…?」

「うん、そうだよ」


俺の独り言を聞いていたらしい凌が答えてくれる。


って事はそうそう会えないよな…。


あ、でも夏休みか。K高の夏休みは少し遅いって聞いたことあるし、会うとしても8月くらいか?