それが君の願いなら。



柚野先輩たちに頭を下げ学校を出る。


行く先は不明。のらりくらりと街を歩くだけ。


俺たちはただ手を繋ぎたいひたすら歩く。


……いや、切り出さないといけないのは俺の方か。


凌にバレないように短く深呼吸をする。


「なぁ凌」

「んー?」


優しい声で返事が返って来て俺の心も幾分か癒された気がする。


「俺たち1年は冬に修学旅行あんじゃん?」

「あ、そっかー。もうそんな季節になるんだねー」


いや、まだまだだぞ? 流石天然凌ちゃん。脳内はもう冬…なのか……?


内心突っ込みながら言葉を続ける。


「俺たちの旅行先、K高と一緒って言うの知ってた?」


そう言った瞬間凌の動きが一瞬止まった。


俺が見間違えるはずない。確かに、俺の言葉に反応した。


いや、違うな。今の凌は"K高"って言葉に反応したんだと思う。


「俺、莉人さんに会ってこようと思う」

「…………なん…で…」


唇から零れる言葉には不安が滲み出ている。


それを無視して俺は言う。


「ちゃんと話してみたいんだ。俺と同じように凌を好きになった莉人さんと…」

「―――っ…、」


何かを言いかけて口を閉じた凌。


いつも言いたいことをちゃんと言えない凌。相手のことを考えて言えなくなるんだよな…。


優しい凌だから仕方ない。でも、今はなんでも言って欲しい。


我が侭かもしんねぇけど、ちゃんと凌の口から聞きたいんだ……。


俺の真剣さが伝わったのか、凌は静かに口を開いて言った。


「……修学旅行。莉人くん達は終わってると思うよ…」

「え?」


予想とは違う凌の言葉に拍子抜けしてしまう。


その前に終わってるって何? もしかして知ってたのか? 連絡取り合ってんのか?


そう考えた時浮かんだ。


「航大に、聞いたの?」


俺の言葉に少し目を見開き、首を横に振る。


じゃあ、なんで…?


俺が言葉を続ける前に凌が言った。


「侑菜がたまに教えてくれてたの、莉人くんの事」


あぁ、そういう事か。


納得した俺は凌の言葉を待つ。


もし凌が話して欲しくないって、嫌だって言うなら俺は会わない。


修学旅行が終わってるってハッキリしてんなら無理だけど…。


「あのね、侑京」

「ん?」

「莉人くんと、話したいの…?」


凌の言葉は震えてた。


不安とか、寂しさとか、そう言うのを含んでるように感じた。


それを分かっていながら「うん」と頷く。


「……嫌?」