それが君の願いなら。



《航大、久しぶり》


素っ気ないかもしれないけど、まぁ大丈夫だろ。


航大の行ったK高は理数系が強い高校。


俺は入れないであろう高校。


勉強は嫌いでも努力はしてるし、別に苦手な教科があるわけでもない。


ただ、どちらかと言えば文系タイプ。


だから俺はK高は無理ってこと。


2限目の授業が始まって数分した時、机の中に入れてあるスマホが点滅していることに気が付いた。


――航大、思ったより返事早えぇ…。


そう思いながら先生にバレないようスマホを確認する。


《おー侑京、久しぶり。どうした?》


航大からの返事を読みストレートに質問を投げかけた。


今更迷うことなんて何も無い。


俺は話がしたいんだ…。


《莉人さんって知ってるか?》


俺の返事にすぐ既読が付いた。


《1個上の田宮 莉人くん?》

《そう》

《幼なじみだし知ってるけど、どうかした?》

《修学旅行の行き先って、俺たちの学校と同じだったりすんの?》

《あー、そう言えば同じだな!》


航大の返信に確信した。


必ず莉人さんに会えると。


理由も、根拠もない。


それでも漠然と感じた。


《サンキュー》

《おぅ!》


やり取りを終えたあとかんがえ込んでいた。


どうやって話そうか。


何から話せばいいのか。


莉人さんは今、凌の事をどう思っているのか――…。


凌の話を聞く限り2人は嫌いになって別れたわけじゃない。


もし莉人さんが浮気をしていなかったとしたら、2人は今も付き合っていたかもしれないしな。


そう考えると性格の悪い考えばかりが浮かんで自分で自分にイライラする。


……なんでこんな考えしか出来ねぇんだろ、俺。


俺の方こそ、いつ愛想つかされても文句言えないよな。


もし莉人さんが今でも凌を好きだと言ったら――?


「絶対渡さねぇけど…」


渡すもんか。俺だって誰より凌が好きなんだ。気持ちの大きさなら莉人さんにだって負ける気がしねぇ。


泣かさないし、傷付けもしない。


俺だって軽い気持ちで付き合ってるわけじゃないんだ。


本当に心から凌が好きで。


心から凌の側にいたいと思ってる。


でも莉人さんと会うかもしれないとなると、ちゃんと凌にも話さないといけないよな…。


俺は覚悟を決め、目の前の授業に集中した。