それが君の願いなら。



1限目が終わった頃教室に戻ると将貴が駆け足で俺の方に来る。


「うっちゃ〜ん? 珍しくサボって何してたんだよ〜」

「将貴うぜぇ…」

「なにー!?」

「アレみてぇ。あの、酔っ払いの親父」

「おいコラ!侑京!そこに直れ!」

「ふっ、誰だよ」


いつもと同じように話す将貴はやっぱりバカだ。


そう思うけど、凌と出会ってから色々なことが楽しく感じるになった。


どんなに小さな事でも楽しくて。


それは多分、凌自身がそう感じているからだと思う。


バカな将貴を眺めながらそんな事を思っていた時。


「そう言や次の時間修学旅行の班決めとかすんだってよー」

「………」


将貴の言葉に俺の体は凍りつく。


「………は、やくね?」


やっと絞り出せた言葉はそれだけ。いや、普通に考えて、タイミング……おかしいだろ…。


まだ7月だぞ? 修学旅行は確か…1月の終わり頃だったはず……。


俺の心を読み取ったらしい将貴が説明してくれた。


「なんか今年は結構いろんな学校と行き先が被ってんだってー。しかも学年問わず。だからササッと班決めて行きたいとこもササッと目星付けとくんだとさー」


………なるほど。1回で将貴の説明が理解出来てしまった。


俺危ねぇかも…。


そう思いながら本当に危ない気がする。


学年問わず他校と修学旅行の行き先が同じ?


そんな事そうそうあっていいもんなのか…?


まず同じ県内の学校………。


「同じ県内…?」

「んー?何がー?」


将貴の言葉を無視して優奈の席へ直行。


「優奈!」

「ん? 何?」

「さっき言ってた親友の弟って誰だ?どこの学校? もしかして、県内か…?」


俺の言いたいことがなんとなく分かったらしい優奈は頷いた。


「県内だよ。名前は"篠倉 航大(こうだい)"」

「え、航大って、あの…?」

「そうそう」

「マジか……」


優奈にお礼を言い自分の席に帰ってきた。


航大。


俺と航大は普通に仲良くて、お互い釣りが好きなとこもあり色々な話をした。


恋愛面以外の話を。


別に航大と凌の間に何かあったわけじゃないし気にはしないけど、まさかの莉人さんと同じ高校か……。


どうすっかな。


そう思いながら無意識的に学ランの内ポケットからスマホを取り出していた。


うちの学校は校内でのスマホは禁止とされている為、見つかると反省文を書かされることになる。


見つからないように机の下でコソコソとLINEを開いた。