「だけど、その俺と凌も昔から仲良いから、もしかすると――…」
"もう知ってるかもしれない"。そんな言葉の続きが安易に想像できる。
やばい……。多分俺の方が焦ってる。
もしこの事を凌が知って莉人さんに会いたいと思ったら…。
もし話し合ってお互いが少しでも想い合っていたとしたら……。
俺は、どうすりゃいいんだよ――。
頭を抱える俺に優奈が言った。
「うっちゃんは何も心配しなくていいと思うよ」
「……なんで? 根拠なんてなっ…」
「凌がいつも話してるから」
俺の言葉を遮るようにして優奈が苦笑しながら話す。
「毎日行くお婆ちゃん家で優奈が凌から聞く話。いつもうっちゃんの事ばっかだよ」
鬱陶しそうに、困ったように、
「毎日両方と一緒にいるから飽きるんだよ」
そう言って笑う優奈。
けど俺は安心したんだ。優奈の言葉に。俺の知らない凌の話に。
凌は俺を想ってくれてると感じることが出来たから。
心配はなくならないと思う。
女々しい俺だもんな。
すっげぇ心配すると思う。色々なことで、色々なところで。
それでも俺がいいと、俺じゃなきゃダメだと想ってくれてる凌がいるから大丈夫なんだ。
もし莉人さんに会ったら俺はどうすんだろうな…。
一発殴るのはもう確定してる。
それ以外に何をする?ちゃんと話し合うか?それとも一方的に責めるか?
いや、違う。
「俺さぁ、莉人さんと話してみたいんだ」
俺の言葉に優奈は大きな目をまた少し大きくさせた。
「……何を話すの?」
探るように。だけどどこか心配そうに聞いてくる優奈に対し、俺は素直な気持ちをそのまま伝えた。
「俺も莉人さんも同じ人を好きになった。同じように惹かれ、結ばれた。だからこそちゃんと話し合ってみたいんだ…」
殴るけど。そう付け足した俺に優奈は声を上げて笑った。
「うん、うっちゃんらしくていいんじゃない?」
「ふっ、だろ?」
「凌もうっちゃんも幸せものだね」
「…出会えたからな」
凌に。
俺は、凌に出会えたから幸せなんだよ。
凌に出会うために生きてきたんだと今なら言える。
出会って間もないけど。付き合い出して日も経ってないけど。
それでも俺たちはお互いが出会えたから幸せなんだ…。
―――凌もそう思ってくれてるといいな。
「優奈」
「んー?」
「俺は優奈に出会えて良かったとも思ってるよ」
「……っ、優奈も」
そう言って2人で笑った。
こうして俺と友達になってくれてサンキューな。
凌のことを教えてくれてありがとな。
本当に、感謝してる。


