それが君の願いなら。



一瞬。本当に一瞬だけ目が合った。


あたしの勘違い?気のせい? …ううん、違う。そんなはずない。


だって、あの男の子の瞳に、確かにあたしが映った。


視力は良くないけど、見えた気がした。あの子の瞳に映るあたしが。


「何、これ…」


ありえないくらい心臓がドクドクと波打ってる。


分かんない。知らない。 ――ううん、本当は知ってる。


この感情を、あたしは知ってる。


3限目、嫌いではない現代文の授業。


いつもならしっかりノート取ってる。教科書だって忘れたことない。


寝ちゃう日だってあるけど、樹英たちにノート貸してもらってる。


だけどこの日の現代文の授業の内容は、あたしの頭に全く入って来ないまま終わった。


「…ん?…し…ちゃ?」


それにさっきの子、誰かに似てる。


あ、分かった。同じクラスの田辺くんだ。けど、似てるのは雰囲気だけ。


カッコイイって言われてる田辺くんだけど、多分、あの子の方がカッコイイ。


って、本当、なんだコレ。


なんか、あたし、あの子のこと好きになっ…。


「おい!梅原 凌!」


「はい!?」


いきなり呼ばれた事で思ったより大きな声が出ちゃったあたしは周りを見回す。


え…。な、何……?


「何?って顔してるけど、こっちはずっと呼んでたからね?!」


そう言って怒った顔をして立ってるのはなっちゃん。


「な、なっちゃん…?」


「もう!さっきからずっと凌ちゃんのこと呼んでたのに!」


「あ、ごめん…」