それが君の願いなら。



あたしは幸せを感じる度に泣いてるね。


莉人くんの涙なんて見たことない。


人前では絶対泣かない莉人くんだから無理もないけど。


あたしの前でくらい弱音を吐いてもいいんだよ。…寧ろ弱い部分を見せてほしいよ。


溢れる涙を両手で拭いながらあたしは莉人くんに言う。


「莉人くんがあたしを好きでいてくれることが嬉っ、しくて…っ、いつも泣いちゃうの…っ…」

「泣き虫凌ちゃんだもんな」

「…違う、けど、そうかもしれない…」


あたし達はいつだって幸せを噛み締めながら生きてる。


莉人くんが側にいてくれるからあたしは幸せでいられる。


死んじゃっても莉人くんだけをは忘れないと思うよ――…。




「あっはは! 相変わらずバカだね〜」

「いやいや…麻衣ちゃんも似たり寄ったりだ思うけどね〜」

「真湖ちゃん…俺の嫁さんの悪口言うなよ……」

「恵五もバカだし相性良い夫婦だろうな!」


すっかり出来上がってるあたし達の両親はリビングで飲み惚ける。


悠ちゃんは今日は友達の誕生日だからといってお泊まりに行ってるし。


再び莉人くんの部屋で2人きり。


今更緊張なんてしないけど、先程の光景がフラッシュバックしてなんだか恥ずかしい。


そんなことを思っていた時。


「なぁ、凌ちゃん」

「…んー?」

「こんな時に言うのもどうかと思うけど、ちゃんと言っとく…」

「え…どうしたの……?」


神妙な面持ちの莉人くんに今度はあたしが焦り出す。


今日の莉人くんはやっぱり変だ…。いつもと雰囲気が違う。


身構えるあたしを自分の方に呼び寄せる。


そっと近付くと後ろから抱き締められた。


「……ごめん」

「え?」


いきなり謝られたって何のことか分からない。


いきなりどうしたの? 何かあったの?


あたしの頭は混乱するばかりで正常に働かない。


ただ一つ分かるのは、莉人くんの声が震えてる。


「俺、この前菜乃花(はのは)にキスされた…」

「……え、」

「菜乃花に告白されて断った。でも、リスカの跡見たら無理に断れなくて……」


なっ…え? ちょっと待って……。どういう事? どうして菜乃花が出てくるの?


何…告白されたって…キス、されたって………。


抱き締められているはずの背中から冷や汗が伝う。


莉人くんの言葉が、上手く理解出来ない――…。


菜乃花は滉くんの妹。つまりあたしとは親戚関係にあたる。


本当の妹みたいに大好きで可愛くて…。


なのにどういう事…?


「告白されて、キスされて、それで、どうしたの……」