それが君の願いなら。



莉人くん家ではもうお祝いの料理がたくさん並び始めていた。


料理好きのうちのお父さんが一生懸命腕を奮ってくれたものばかり。


「凌、おめでとう!」

「ありがと麻衣ちゃん!」


あたしの合格報告を聞いた麻衣ちゃんは笑顔であたしを抱き締めてくれる。


「これで春から凌はうちの嫁か〜」


なんて意味の分からない事を言ってる恵五くんの顔も綻んでて。


いつもならほっとくけど、今日は嬉しくて「お世話になります〜」なんて言ってあたしまで乗っちゃう。


リビングで大人たちとワイワイしていた時。


「凌ちゃん」


後ろから莉人くんに呼ばれ部屋に行く。


部屋のドアを閉めた瞬間莉人くんに抱き締められ仰け反りそうになった。


「り、莉人くん…?」


いつも以上に力強い莉人くん。どうしたんだろう…。


あたしは莉人くんの背中に両手を回し同じように強く抱き締める。


「おめでと」


体が離れた瞬間降って来るお祝いの言葉と温かいキス。


「へへへ。ありがとう」


笑顔になるあたしはもう一度莉人くんに抱き着いた。


嬉しくて嬉しくて、今まで頑張ってきて良かったと思える。


大好きな莉人くんにお祝いされて嬉しい。


暗くなる時間でもないのに外はもう既に真っ暗。さすが冬だな…なんて呑気に思ってるとベッドに押し倒された。


「…っ、どうし…」


いきなりの事で驚いたあたしの首筋に莉人くんの顔が埋まる。


いつもはキスだけのあたし達。だけど今日は莉人くんの様子が明らかに違う。


どうしたの…? 何か焦ってるみたいにも見える莉人くんに声をかけた。


「莉人くん? お母さん達来ちゃったらどうするの?」


そんなあたしの心配をよそに「もうちょっとだけ」と言って離れようとしない。


嬉しいけど、いきなりの事で不安になるよ。


温かい莉人くんの部屋と体温。


「……離したくないっ…」

「え、」


絞り出すようにそう言った莉人くん。


「凌ちゃんを離したくない。離れたくない。離れて欲しくない」

「莉人くん……?」

「俺だけがそう思ってんの…?」


寂しそうな莉人くんの顔に、声に、あたしは首を振るしかなかった。


そんな訳ない。あたしだって莉人くんが好きすぎて苦しいんだよ…。


ずっと一緒にいたいよ…。ずっと側にいたいよ…。


「あたしの方が莉人くんを好きだと思う…」


そう言った途端、右目から涙が零れた。


何も知らない幸せの涙。幸せで、今が愛しくて、嬉しくて溢れた涙。