それが君の願いなら。



――緊張する胸を抑えながらあたしは受験した高校に来ている。


理由はただ一つ…。


「あ!出た!」
「俺何番だっけ!?」
「お…落ちてる…っ」
「うぉぉおおおお!受かったぁぁあああ!」


そう……合格発表の張り出し。


あたしは自分の受験番号を確かめて張り紙に目をやる。


……121…121………。


100から順に見ていく。数字の多さに頭が痛くなるのを我慢し自分の番号を探す。


「……っあ、ったー!!」


周りの目を気にもせず叫び一人舞い上がるあたし。


「やったぁ〜〜!」


万歳して喜んでいると、後ろから誰かに名前を呼ばれ振り返る。


「あ、滉(ひろ)くん!」

「凌どうだったか?あったか?」

「あったよー!良かったー!」

「おー!頑張ったな〜!おめでと」


そう言って頭を撫でてくる滉くん。


滉くんは親戚のお兄ちゃんで、去年からこの高校で臨時教師をしている。


担当はあたしの嫌いな化学らしい。数学より出来ないし意味分かんない。


だけど美容師に化学は必須科目…。どうしても取らなきゃいけない授業の一つ。


肩を落としそうになるあたしに滉くんが笑顔で言った。


「今日はお祝いか? 俺も行こうかな〜」

「あはは! 来てって言いたいとこだけど、今日は莉人くん家にお呼ばれされてるからごめんね!」

「そう言や莉人も受かったらしいな」


どこから情報を入手ているのか滉くんがあたしに聞いてくる。


「あたしより少し早く楽してるよ」


ちょっとした嫌味を上手く交わしながら「お前も今日から楽だろ」なんて言ってくる。


確かにその通りなんだけど。課題とか貰うよね。楽なんてできやしない…。


そんな話をしていると学校の先生らしき人が滉くんを呼ぶ。


「っと、悪ぃな凌。また今度家行くって真湖ちゃん達にも伝えといて!」

「分かった! またね」


走り去って行く滉くんに手を振りあたしは帰路を急いだ。


早く莉人くんに言いたい。


それでギューッてして欲しい。


あの大きな手で頭を撫でられながら「頑張ったもんな」って言って欲しい。


あの優しい笑顔でキスをして欲しい。


今すぐ莉人くんに会いたい――…。


あたしの思いは走る速度までもを上げて行った。