それが君の願いなら。



年が明けてもう1月中旬のある日。


「受かった!」


玄関のドアが開いた瞬間飛び込んで来た莉人くんが手にしていたのは合格通知。


「わっ…や、やったー!!」

「っしゃー!」


寒い玄関だと言うことも忘れあたし達ははしゃぎ回る。


「ちょっと!? 何騒いで…あら、莉人?」


近所迷惑を考えない声に怒りながら玄関まで来たお母さん。抱き合うあたし達を見て不思議そうに首を傾げた。


「どうしたの?」

「お母さん!莉人くん受かったって!」

「えっ!受かったの!? おめでとうー!どうする?今日はうちでご馳走にする?」


張り切るお母さんに莉人くんはお礼を言いながら答えた。


「ありがと。でも今日はお母さんが俺の好きなもの作ってくれるらしいから」

「…そっか。ならまた近いうちに家でも莉人のお祝いしようか」


そう言って笑うお母さん。


もう一度お礼を言う莉人くんに、


「麻衣ちゃんには真湖から言っておくから。 それと莉人。受かったからって風邪引くとダメでしょ。凌の部屋行きなさい」


そう言ってリビングに戻って行った。


あたしはお母さんに言われた通り莉人くんを自分の部屋にあげ改めて合格を祝福した。


「本当に良かったね! おめでとう!」


ニコニコと満面の笑みを浮かべるあしたに莉人くんも嬉しそうな顔。


「ありがと。凌ちゃんが一緒にいてくれたから頑張れたんだよ」

「ううん、受かったのは莉人くんの実力でしょ? あたしは関係ないもん」

「俺が勝手に思ってるだけ。……次は凌ちゃんの番だな」


莉人くんの言葉にあたしは一呼吸置いて言葉を紡いだ。


「あたしね、本当に今の高校を目指すか迷ってる。出来れば莉人くんと同じ学校がいいけど、夢がそれぞれ違うからそうは行かないし…」


迷う必要なんてないのなもしれないけど、どうしても不安になってしまう。


春からの新しい生活。莉人くんがいない毎日。


あたしはどうなっちゃうのかな…。


そんな心配事を消そうとするかのように、莉人くんはあたしを抱き締めてくれる。


「大丈夫。俺は隣にいないけど、凌ちゃんの心の中にはちゃんといるから」


そう言いながらあたしの背中を優しく叩く。


――この温もりももうすぐ失くなっちゃうのかな…。


試験も受けてないのにそんな事を考えて涙が出そうになった。


「大丈夫、だよね、あたし達…」

「………うん」

「莉人くんは、隣にいてくれるよね…」

「……、うん」


莉人くんが返事には不自然な間があった。だけど、気にしない。


気にしたってどうしようもないじゃん。


あたしはあたしの進む道のために頑張らないといけないことがある。


だから迷わない。


「あたし…絶対美容師になる……」

「…凌ちゃんならなれるよ。…俺も頑張って医者目指す…」

「莉人くんなら大丈夫だよ。誰より優しいお医者さんになれるよ」


そう言ってあたし達は小さくキスをする。


終わりが近付く冬の日。