それが君の願いなら。



麻衣ちゃんの言う通り置いてあった自分の着替えを来てお風呂から上がった。


莉人くんの部屋に戻れば、パラパラと漫画を読みながら布団に寝転がってる莉人くん。


時計はもう21時を示そうとしている。


そろそろ帰らなくちゃな。そう思いながら莉人くんと離れたくないとも思ってしまう。


……莉人くんと長く一緒にいるとどうしてもワガママになっちゃうからダメだ。


ため息をつくあたしに莉人くんは寝転がったまま問いかけてきた。


「今日、泊まってく?」

「―――……、へっ?」


い、今のは、聞き間違い…? あたしの空耳?


こんがらがる頭の中で整理しようとしていると莉人くんがもう一度言ってくれる。


「だから、今日泊まってく?」


………。


「ぅ…、えぇぇええええ!?」

「うるさい!」

「だ、だって!」

「うるさいから時間切れ〜」

「な…何ですかそれは……」

「今日泊まり決定」

「なっ…!なっ……!」


言葉になっていない言葉を発しながら口をパクパクするあたし。


そんなあたしに「ぷっ」と笑う今の莉人くんは絶対俺様になってるよね…。


慌てるあたしを自分のベッドに呼び座らせる。


「今更泊まり如きでその反応する?」


うっ…確かにそれはそうなんだけど……。


今までも何度か泊まったことはあるけど、それは小学生の時だったし!


今とは心境が違うもん……。


俯くあたしの頭を撫でながら聞いてくる。


「泊まり嫌なら帰っていいよ」

「嫌じゃないよ…」

「じゃあ何」

「な、何って…恥ずかしい、じゃん…」

「恥ずかしいの凌ちゃんだけだと思ってんの?」


そう言った莉人くんの言葉に顔を上げれば、ほんのり頬を赤くした莉人くんがいて。


緊張してるのはあたしだけじゃないんだ、なんて思って安心してしまう。


「一緒に寝るわけじゃないし、良くない?」


……確かにそうだ。 一緒に寝ないもんね。なら何も恥ずかしくないよね…。


――なんか、自分の考えが恥ずかしく思えてきたよ…!


「じゃあ、お言葉に甘えっ…」

「一緒に寝てもいいけどね」

「〜〜っ!!」


ニヤニヤと意地悪い笑顔を浮かべる莉人くんの腕を叩きながらリビングに逃げた。


リビングで麻衣ちゃんに泊まらせてもらいたいと伝えると、快くOKしてくれる。


「今更確認とんなくていいよ〜。凌は家族も同然だからね〜」


なんて嬉しい言葉を貰って一気にテンションが戻った。


悠ちゃんの部屋に行き泊まることを伝えればこちらも嬉しそうな顔で抱き着いて来る。


可愛い悠ちゃんに癒されながらあたしは莉人くんの部屋に戻った。