それが君の願いなら。



「りっくん、凌ちゃん。ご飯出来た」


気が付けばもう19時22分。


いつの間にか帰って来てた悠ちゃんがあたしと莉人くんを呼びに来てくれた。


「あっ、悠ちゃん。おかえり」

「ただいま〜」


笑顔で言うあたしに悠ちゃんも笑顔で返してくれる。


あー可愛いっ! 気が付けばあたしの身長を追い越しそうな悠ちゃんにほんわかしながら莉人くんとリビングに向かう。


リビングには色々な料理が既に並んでいた。


「麻衣ちゃん!声かけてくれたら手伝ったのに…!」


悔しがるあたしに麻衣ちゃんはため息をつきながら言った。


「バーカ、受験生が勉強以外のことしてどうすんの」

「ほら、息抜きとか…?」

「はいはい。息抜きはまた今度ね〜」


そう言って笑いながらそれぞれの席に着く。


あたしが田宮家に来るようになってもう7年――…。


いつの間にかあたしの席まで決まっている。


前の家と似てるリビング。あたしの席は必ず莉人くんの隣で麻衣ちゃんの向かい側。


緊張してたはずの食卓も今では自分の家みたいに感じちゃってる。


「いただきます」

「「…ただきます」」

「いっぱい食べなさいよー!」


それぞれの掛け声で賑わい始める食卓はやっぱり楽しい。


だけど今日は恵五くんがいない。


「お父さん来ないって言ってた?」

「尚くんなら恵五と飲んでるよ」

「えっ! 恵五くん、うち行っちゃったの!?」


どうしよう…! お父さん来ると思ってたからあたしの着替え持って来てもらおうと思ってたのに…!


これじゃあお風呂入らせてもらえない…。


落ち込むあたしを見て莉人くんが麻衣ちゃんに説明してくれる。


莉人くんの話を聞いて麻衣ちゃんは何かを思い出したように口を開いた。


「あれ?凌の着替え置いてなかったっけ?」


麻衣ちゃんの言葉にあたしは過去の記憶を遡る。


うーん……置いてあったような置いてなかったような…。


どうだっけ?


首を傾げてみせると、


「あとで見てあげるから。なくてもうちの着替え貸すからお風呂入りな」

「わっ、やった! ありがとう!」


そう言ってくれた麻衣ちゃんにお礼を言いながらご飯を食べる。


残りの勉強する前に麻衣ちゃんの後片付け手伝わないと!


莉人くんは悠ちゃんとお風呂入るだろうから、その間に終わらせなくちゃね。


この後のことを考えながらあたしは1人頷いた。