それが君の願いなら。



気が付けばあたし達は中2になっていて。


侑菜ともあれから次第に仲を取り戻していった。


「あー、さっむーい!」


部活終わり。莉人くんと侑菜と3人で歩く帰り道。


あまりの寒さに侑菜は叫んでばかり。


「侑菜ちゃんうるさーい」

「はーぁ!? しばくっ!」

「――いった! マジで叩かれた…」

「あはははは!」


3人で笑い合いながら、話しながら歩く帰り道はあっという間で。楽しくて。


時間が経つのは本当に早い。


「じゃあ俺、凌ちゃん送ってくから」

「じゃあね侑菜。気を付けてね」

「凌も気を付けてね。莉人くんに襲われないように」

「「〜〜っバカ!」」


あたしと莉人くんの声がハモったのが面白かったのか、1人ケラケラと笑いながら帰って行く侑菜。


――中1のあの夏の日。侑菜と初めてした大喧嘩。


侑菜からすればあんなのどうってことない喧嘩なのかもしれないけど、あたしからすればきっと一生に一度の大喧嘩。


あの大喧嘩から1ヶ月程であたしと侑菜の仲は復活。


自分たちよりも莉人くんや周りの部員たちの方が驚いていた。


莉人くんには「仲直りするの早かったね」なんて言われちゃうし…。


他の部員にもあたし達2人が気まずくなっている事は一目瞭然で。


1ヶ月程度で復活した事にかなり驚かれた。


「やっぱ2人の絆って深いな」


なんて莉人くんに言われたことが嬉しくて侑菜に自慢したほど。


侑菜も今では莉人くんなんてどうでもいいみたいで。


「色々あったけど、やっぱり3人でいる時が1番楽しいね!」


そう微笑むあたしに莉人くんはムスッとしながら言った。


「…俺と2人でいる時より? もう侑菜ちゃんと付き合えば?」


なんて言うから可愛くて笑っちゃう。


「……笑うとこじゃないけど…?」

「ふふ、ごめん。だって、莉人くんが可愛いこと言うからー!」

「いや、ただのヤキモチなんですが…」

「それが可愛いんだよー!」


ずっと笑ってるあたしに莉人くんが続けた。


「……高校は離れると思う」


その言葉に、なんとなくだけど予感していたから、頷いてみせる。


寂しくないわけない。卒業式には絶対泣く。莉人くんと離れたくないもん。


だけど、お互いの夢があるからこそ、あたし達は離れるんだと思う。


「春には受験生だしな…」

「お互い、頑張らないとね」

「また、ちゃんとこれからの事話そうな」


――…莉人くんの言ってることは分かる。ただ、あたしの中に"別れる"なんて選択肢はないよ。


それだけは、知っていてね。