「ちゃんと話せなかったの?」
莉人くんの言葉に首を横に振る。
ちゃんと話せたよ…。あたしの思いは、侑菜に届いた。
侑菜の叫びも、痛みも、あたしに届いたから。 だから、侑菜にだって届いてるよね…。
「なら大丈夫」
そう言う莉人くんの顔は笑顔で。優しい、顔をしてる。
「凌ちゃんと侑菜ちゃんの絆って結構頑丈じゃん? どちらかと言えば俺と凌ちゃんよ絆の方が脆くない?」
「っそんな事ないよ! あたし、莉人くんの事信じてるもん!」
莉人くんの言葉が冗談だって分かっていながらムキになってしまった。
だって、そんなの嫌だもん。
あたしと莉人くんだって、ちゃんと解り合えてるよ。
少なからず、あたしはそう信じてるよ…。
そんな意志を込めた目で莉人くんを見れば小さく笑われる。
「俺も信じてる。ただ、侑菜ちゃんとの絆にちょっと嫉妬しただけ」
「……嫉妬する必要ないのに…」
「ん。でも、凌ちゃんが俺にベタ惚れなのは分かったかも」
そう言ってニヤリと笑う莉人くんにあたしの顔はみるみるうちに赤くなる。
意地悪だって分かってる。
分かってるのにどうしてこうも顔に出ちゃうの…?
いつの間にか引っ込んだ涙を見て莉人くんは声に出して笑った。
ムーっとするあたしの手を引きながら、
「さて、帰るか」
そう言って歩き出す。
どうしてかこんな時ほど素直な気持ちを言いたくなる。
あたしは自然と出てくる言葉を莉人くんに投げ付けていく。
「これから先何があっても莉人くんといれば大丈夫。莉人くんの側にいて、莉人くんが側にいてくれて。そしたらあたしはずっと幸せでいられるよ」
あたしの手を引いて歩いていた莉人くんの足がピタッと止まる。
赤くした顔で振り向きながら、
「……バカ凌」
そう呟く。
「俺だって誰より凌ちゃんが好き。すっごいハズいけど、凌ちゃんばっかに言わせるのもアレだしな…」
なんて言いながらあたしを抱き締めた。 莉人くんの温もりに包まれながらあたしは頷く。
「これから先凌ちゃんと生きていくのは俺。誰より幸せにするつったろ?」
「……誰よりとは言われてないよ?」
「……言ったことにしといて」
「ふふっ。今も幸せだからそういう事にしとくね」
「ありがと」
2人笑い合いながら小さくキスをする。
莉人くんがいればそれだけでいい。それは決して嘘じゃない。
あたしは莉人くんが大好き。
本当に、大好きなの…。 それだけなのに、どうして……。


