莉人くんと付き合うことになったけど、まだ周りには秘密。


特に侑菜には…。


侑菜のことだから、あたし達が付き合い始めたって知るとすごく怒ると思う。莉人くんを好きだ思うように、侑菜の事もとても好きだから、この関係が崩れるのは嫌。


昔からずっと一緒にいてくれた。ずっと一緒にいた。大切で大好きな侑菜と仲悪くなるなんて嫌に決まってる。


だけど、そんな大切な存在の侑菜に隠し事をしておくのも本当は嫌で…。


どうしよう…。莉人くんに相談するのはおかしいよね…。


「はぁ…」


部活中だと言うのにため息が絶えないあたしに気付いた莉人くんが近付いてくる。


「ため息ばっかどうした?」

「あ、そんな大した事じゃないよ!」

「……ふーん…で、本当は?」

「……何も、ないよ」


黙り込むあたしに莉人くんは少し寂しそうな顔をして、


「俺には言えないような疚しいこと?」

「っそうじゃなくて!」

「ふっ、ごめん。凌ちゃんは何でも顔に出るから隠し事無理だもんな」


なんて意地悪を言ってくる。


……確かに顔には出るけど…。


莉人くんが心配してくれてるのが分かる。だけど本当に、こればかりはあたし自身で解決しないとダメだと思うの。


だから、ちゃんと侑菜に話してもいいかな…?


「あのね、侑菜に言いたいの」


そう言ったあたしの言葉で察したらしい莉人くんは少し目を見開いた。


そして静かに口を開き、「凌ちゃんに任せる」と言ってくれた。


それだけで嬉しくて抱き着きそうになるのを抑える。


「ありがとう!」

「その代わり、何か言われたら絶対言うこと。オッケー?」

「うん!オッケー!」

「……侑菜ちゃん、分かってくれるといいけどな…」


莉人くんはそう呟いて苦笑い。あたし達3人の両親が仲良いからよくお互いの家を行ったり来たりしてる。


その分3人がお互いの性格をよく理解してる。だから莉人くんも侑菜の性格をよく分かってるわけで…。


「ダメだ……侑菜ちゃんが理解してくれる図が浮かばね…」


そう言って溜め息をつく莉人くんに今度はあたしが苦笑いをした。


「大丈夫。侑菜は馬鹿じゃないもん。きっと分かってくれるってあたしは信じてる」

「……なんか、俺より侑菜ちゃんの方が信用されてる…?」

「ん?そんな事ないよ?」

「ならいーけどー」


お喋りは程々にしてそれぞれの練習に戻る。


あたし達が仲良く話してるとこを侑菜が目撃すると熱視線が送られてくる。


目で相手を牽制する侑菜は怖いから…。