ねぇ、あたしの気持ちは届いてるかな?


幸せだと思うこの瞬間を大切にしたい。


初めてそう思えた。


誰より側にいたいと。誰より一緒にいたいと。


心からそう思えた、初めての人。


「……凌ちゃん…」


そっと離れた体がやけに寂しくて、あたしは下を向く。


「――っ」


俯くあたしの顎を持ち上げた莉人くんは優しくあたしにキスをした。


可愛かった顔も今では男の顔で。


いつからか"カッコイイ"って思うようにもなってた。ずっと可愛いとしか思わなかったのに…。


そっと離れた唇。


目が合ったお互いの顔はすごく赤くて。


「……莉人くん、照れてる?」


あたしの問いかけに右手で口元を隠しながら「悪い?」と聞いてくる。


それがなんだか愛おしくて。


本当に大好きで、大切にしたくて。


ギュッと抱き着いた。


「あたしね、誰より莉人くんが好きだよ。誰より一緒にいたいし、一緒にいて欲しい」

「……おいバカ。それ以上言ったらまた口塞ぐぞ」

「……恥ずかしいくせに」


そう言ったあたしの口を本当に塞いできた莉人くん。


そして意地悪そうな顔で「付き合ってくれる?」そう聞いてきた。


「…っ、ヤダって言ったら?」

「そんな選択肢ないし。それに断られるとも思ってないし」

「じゃああたしの返事聞かなくてもいいじゃん…」


普段シャイな莉人くんはたまにこうして俺様っぽくなる。


昔からそんな莉人くんにあたしは振り回されっぱなしで…。


「言わないとダメ。凌ちゃんの言葉で聞きたいもん」

「――…っもう…」


ほら。こうやっていつもあたしを惑わせる。


あたしは莉人くんの首に腕を回して短いキスを落とす。


「つ、付き合って…下さい……」


穴があったら入りたいくらい恥ずかしいのに、目の前の莉人くんが恥ずかしがりながらも本当に嬉しそうな顔をしてるからあたしまで嬉しくなった。


「これからよろしくお願いします」


そう言ったあたしに莉人くんは笑顔で、


「幸せにする」


そう言ってくれた。


プロポーズみたいなその言葉をいつか叶えたいと本気で思うあたし。


これから起きる悲しい出来事を知りもしないで――。

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