どうしたの、そう聞く前に莉人くんが口を開いた。
「凌ちゃんてさ、しっかりしてるように見えてかなりの天然だよな」
「えっ? そ、そんな事ないと思うけど…」
「いや、ある。現に今だって上目遣いしたじゃん」
「それは違うよ! あたし達の身長差から自然とそうなっちゃうだけで!」
「ふっ、うん、分かってるけど」
「分かってるんなら言わなくてもいいじゃん」
ムスッとして言い返すあたしを見て笑いながら莉人くんが言う。
「天然でバカな凌ちゃんだから言うけど」
「……悪口言うの…?」
「バカ、違う」
「っい、今の悪口だった…」
「いいから聞けって」
莉人くんに促されてあたしは頷く。
頷いたのを確認した途端、あたしは莉人くんに抱き締められた。
「〜〜っ!?」
声にならない声があたしから出る。抱き締められた事に焦るあたし。
心臓の音聞こえちゃう…! どうしよう…!
うるさい心臓の音はきっと莉人くんにも聞こえてる。
あたしを抱き締めたまま何も言ってこない莉人くん。
口を開くも何を言えばいいのか分からなくて。
名前を呼ぼうとした時、
「好き」
静かに、耳元で囁かれた言葉。
―――え?
す、き……? それって、友達として? 幼なじみとして?
聞きたいことはたくさんあるのに、一つとして言葉にできない。
「し、心臓の音…すごい……」
かろうじて出た言葉は、そんな変な言葉だった。
「それ、俺の心臓の音ね」
「違うよ…あたしだよ…」
「……ドキドキしてんの?」
「っ、当たり前」
「っほら、やっぱバカ」
「バカじゃないもん。莉人くん何か知らないもん…」
そう言ったあたしの言葉にどこか寂しそうな莉人くんの声。
「俺のこと、嫌い…?」
「――…」
どうしてそんな声出すの…。 あたしの気持ち知ってるんじゃないの?
あたしより莉人くんの方がバカだよ…。
「嫌い、」
「……そっ」
「なわけ、ないでしょ…バカ……」
「――っ…」
莉人くんが息を呑むのが分かった。
体から伝わってくる心臓の音はどっちのものかな?
「――ねぇ莉人くん」
「…何」
「あたしね、ずっと莉人くんが好きだったよ」
初めて会った小3の春。きっと一目惚れだったあたし。
だけどね、あの頃の何倍も何十倍も今の莉人くんの方が好きだよ。
いつだって一緒にいるのに、もっとずっと側にいたいって思ってる。これからもずっと一緒にいて欲しいって思ってる。
それくらい莉人くんが好きなの。


