それが君の願いなら。



そしたら莉人くんも何も無かったかのように「どうした?」って。


あたし達は遊ぶ約束をしたり、電話する約束をして帰ってた。


お互いの親からもからかわれるくらい相変わらず仲良くて。


「凌は将来莉人と結婚するよな」

「いや、しないから」

「しなさい!」

「強制結婚…?」


なんて事もよく言われてた。


莉人くんのお父さんはあたしのお父さんとすごく仲良くて、お互いの家にもよく行ってた。


莉人くんと一緒にいたり話したりしてるとすぐ2人一緒に呼ばれる。


「莉人、将来の嫁が凌みたいな子だったらお前も嬉しいだろ?」


「…お父さん、うるさい」


「……凌、将来の婿が莉人みたいな子だったら嬉しいだろ?」


「それ、答えなきゃダメなの?」


あたし達はまともに応える事なんてしなかった。


恥ずかしいとかそう言うんじゃなくて、本当にあしらう程度。


「莉人、凌、俺はお前たち2人に結婚して欲しいと思っ……」


「凌ちゃん、部屋行くよ」


「わっ、」


「コラ! 莉人!凌!」


逃げるようにあたしの腕を引き自分の部屋に連れて行く莉人くん。


「はぁ…」


部屋の戸を閉めるなり大きな溜息を漏らす莉人くんに思わず笑ってしまう。


「ふふっ。今日はかなり飲んでるみたいだね、恵五(けいご)くん」


「お父さんがうるさいのはいつもだろ…」


呆れながらそう言う莉人くんはゆっくりとベッドに座った。


そんな莉人くんに笑いながら、「お疲れ様」そう言って頭を撫でる。


「――っ!!」


「……? 莉人くん?」


ベッドに座ってるからいつもより下にある目線がなんだか新鮮で。


莉人くんの上目遣いに内心ドキドキしながら平然とした様子で聞く。


「凌ちゃん」


撫でてたあたしの腕を掴み立ち上がった莉人くんと、いつもと同じ目線になる。


あたしの身長は152センチ。莉人くんは男の子にしてはあまり高くない168センチほど。


驚いたあたしは恐る恐る莉人くんを見上げた。


「り、莉人くん…?」


小さくなる声にも必ず反応してくれる。莉人くんはいつだってあたしの声を聞き逃さないでいてくれた。


どんなに小さな声でも、魔法みたいにちゃんと届いてる。


それが不思議で、いつも2人で笑ってた。


今だってあたしの声に「ん?」と聞き返してきてくれる。