―――……あたし、侑菜、樹英、なっちゃんの4人は幼なじみで、小学生の頃からよく一緒にいた。


喧嘩もたくさんしたけど、それでも一緒にいるくらい仲良しで。


そんなあたし達4人が小学3年生になって1ヶ月程経ったある日。なっちゃんから自分たちのクラスに転校生が来ることを聞かされた。


「男の子だって!」
「ハーフらしいよ!」
「目も青なんだって!」


そんな噂を信じてあたしも楽しみにしてた。


……だけど転校して来た男の子はあたしより身長が低くて、女の子みたいな男の子だった。


あたしのその子に対する第一印象は"可愛い"それだけ。


きっと、その時から惹かれてたんだと思う。今になって思うんだけど。


一言も話さないまま体育館に移動して集会が始まった。


前に出た転校生の声を、その時初めて聞いた。


『田宮 莉人(たみや りひと)です』


それだけ。その時は照れてるのかな、って思ったんだと思う。


クラスの中で幾つかの班を作って授業を受け、お昼も同じメンバーで食べる。


班長だったあたしは迷わず莉人くんを自分の班に入れた。


どうして選んだのかなんて覚えてない。あの時ドキドキしてた事は覚えてるのに…。


自分でも気付かないうちに惹かれてた。多分あれは一目惚れ。


――莉人くんが班員になって数日。あたし達はすっごく仲良くなったの。


その頃から『付き合ってるの?』って聞かれることは多々あって。


だけど何も気付かないあたしは首を横に振るだけ。


放課後だって毎日一緒に遊んでた。


莉人くんともう1人の班員の男の子があたしの家に遊びに来て、3人でよくゲームをした。


莉人くんとあたしのお母さんが同級生で友達だって事は転校初日から知ってた。


だからあたし達が一緒にいて遊んでても何も言われなかった。


それから1年程経った夏休みのこと。


あたしは莉人くんが好きだって事に今更だけど気が付いた。


小さなお祭りで偶然会ったあたし達はいつものようにはしゃいで一緒に遊んでたの。


おばあちゃんに「帰るよ」って言われた時に初めて莉人くんと離れたくないって感じた。自然と、好きだって感じてた。


気付いたところで告白なんて出来ないし、何も変わらない関係を過ごしてたあたし達2人。


だけど小学6年生になった時。


侑菜が、莉人くんに告白した――…。


何も知らなかったから。何も聞いてなかったから。


すごく戸惑ったよ。焦ったよ。


どうして言ってくれないのって思った。そんなあたしを侑菜は警戒してたんだと思う。


だって、お互い異性の中で1番仲良いって言ってたんだから。周りからも付き合ってる?って聞かれちゃうくらい仲良かったんだもん。


警戒しない方が無理だよね、なんて…。


莉人くんは最初断ったの。


いつだって強くて、頭も運動神経も良かった侑菜が怖かったんだって。