それが君の願いなら。



なっちゃんの「えっ!?」と言う声に気付きながらも、離れたくない気持ちが勝る。


なんか、ダメ。


今はまだ離れたくない……。


侑京の温もりが優しくて。愛しくて。なんだか泣きたくなる…。


そんなあたしに「凌? どうした?」と聞いてくる侑京。


その声も、言葉も、あたしへの想いも。全部全部愛しくて仕方ない。


あたし、侑京の事が好きすぎるんだよ…。


抱き締める腕に力を込める。


「凌」


後ろから聞こえた声に侑京から渋々離れて振り返る。


そこには心配そうな顔であたしを見つめる侑菜がいた。


「……凌、ちゃんと話しな。榊なら大丈夫。凌が選んだんだから、絶対大丈夫」


そう言って微笑んだかと思うと、「で、うちの前でイチャつくな!」と怒りながらあたし達2人を教室から追い出す。


侑京と顔を見合わせて近くの公園に向かった。


そこで莉人くんの事を話そう。


そう心に決めて外に出た。


「……」


「……」


「……さっき、」


歩いている途中、最初に口を開いたのはあたし、ではなくて侑京。


指を絡めて歩く隣の侑京に視線を移すと、どこか寂しそうな顔をしているように見えた。


不思議に思いながら次の言葉を待っていると、


「…ごめん、泣いてるの見た」


小さくそう呟いた侑京。


その言葉一つでピンとくる。 ……莉人くんの話してた時だよね?


あたしは「公園で話す」とだけ言い、黙々と歩いた。


繋いだ指から伝わってくる侑京の体温は相変わらず温かい。


それだけで泣きそうになるあたし。 本当に大丈夫なのかな…。


数分で公園に着き、子供用の滑り台に向かう。


夏の夜風は生暖かくてどこか気持ち悪いのに、侑京が隣にいるだけでどうでもよくなる。


滑り台を一度滑った侑京はそこから動かない。


そんな侑京を見て笑ってるあたしに「来て」と自分の膝を叩く。


「何?」


「ん、座って」


「……っきゃ!」


戸惑うあたしの腕を引っ張り、無理やり自分の膝に座らせる。


恥ずかしくて俯くあたしの肩に顔を置きながら、「教えて」とだけ囁いた。


耳元から聞こえる侑京の甘い声に酔いそうになりながらもあたしは頷いて見せ、自分の過去を話し出した――。

.