それが君の願いなら。



「「ありがとうございましたー」」


気が付けば4限目が終わりもうお昼。


今日はあっという間に1日が終わりそう…なんて思いながらお弁当を持ち侑菜の教室へ向かった。


だけど教室は真っ暗で。


……そう言えばさっき、廊下歩いてたような。


曖昧な記憶を辿りながら机にお弁当を置き手を洗いに行く。


教室を1歩でも出てしまえば廊下は熱が篭っててかなり暑い。


いくら窓を開けてても風が入って来ないと意味ないのに…。


そう思いながら廊下を歩いていると、後ろから「凌」と呼ばれた。


それは大好きな人の声で。


振り返れば愛しい人がいて。


「侑京!」


タタッと駆けて侑京に抱き着く。


暑いけどそんなのどうでも良かった。会えたことが嬉しくて、ついつい甘えてしまう。だって、今日初めて会えたんだもん。


チャイムが鳴ったばかりで廊下の人通りはまだ少ない。


「あれ、今日は積極的に来てくれるんだ?」


ニヤっとしながらそう言う侑京に顔が熱くなる。


「違うもん…今日初めて会えて嬉しいだ…っ!」


全て言い切らぬうちに抱き締められたあたしの体。


こ、ここ、廊下なんですが…!


あたしの思いを汲み取ってくれたらしい侑京だけど、


「廊下でも抱き着いて来たのは凌の方だろ? 俺が離すわけないじゃん」


「だ、だって嬉しかったから…つい……」


小さくなっていく語尾には恥ずかしさやら嬉しさが混ざってて。


侑京から『離すわけない』なんて言われて嬉しくない人はいないと思う。


少なくともあたしは絶対嬉しい。


「う、侑京! みんな帰って来てるよ!」


ざわめき出す廊下が人で溢れる前に離れようとするあたし。


だけど侑京はそんなの気にしてない様子で。


きっと周りはあたし達が付き合ってることを知らないだろうから、余計に焦ってしまう。


「侑京っ!」


名前を呼んだ瞬間離れた体。


「――っ!」


それと同時に触れた唇。


したり顔であたしを見つめてくる侑京の笑顔に熱が引かない。


「凌、今日の放課後一緒に帰れる?」


「…うん、大丈夫だよ」


「じゃあ迎えに来る。教室いて」


「分かった…」


じゃあね、そう言おうとしたあたしに「他の男に照れた顔見せんなよ」と言って去って行く。


その言葉でまた顔に熱が集まる。


侑京に振り回されたあたしは、目的を忘れ教室にUターンして席に着き侑菜を待った。