それが君の願いなら。



もんもんとする中なっちゃんは2つ目の質問を投げかけて来る。


「じゃあ2問目! キスはした?」


「――…っ、はぁ!?」


「あー、その様子だとしたんだ〜」


ニヤニヤとあたしを見てくるなっちゃんの目は逃がさないと言ってる肉食動物みたいで怖い…。


「したんでしょ〜?」


「っもう!それはいいから!」


「そうかそうかーしたのかー!」


なかなか諦めてくれないなっちゃんに本気で呆れたあたしは質問に答えるのを止めにする。


少し怒りながら「もう先生来るよ」と言えば普段通り「あ、戻るね」と言って自分の席に帰って行く。


……もう少し反省してくれたっていいのに…。


あたしの思いはなっちゃんに伝わるはずもなく。ため息しか出てこない。


まぁ、1限目が終わればあたしもなっちゃんも今より落ち着いてるだろうし、大丈夫だと思うけど。


そう思いながら1限目の準備をし、先生を待った。


しばらくして「はい、始めるよー」と先生が教室に入って来て。


……やっぱり寝ようかな、と思っていると後ろの席の雅ちゃんに話しかけられた。


「凌ちゃん凌ちゃん」


「んー?」


「侑京くんとの事、まーくんに聞いたって言ったじゃん?」


「うん」


「まーくんが言うには、侑京くんが嬉しそうに言ったきたらしいよ」


「…え? どういう事?」


「だから、侑京くんがまーくんに報告して来たんだって。嬉しそうに」


そう言う雅ちゃんの言葉に、告白をOKした時の侑京の顔が思い浮かんだ。


本当に幸せそうで。 あたしまで嬉しくなって、心から温かい気持ちになった。


―――……侑京もそうだったのかなぁ。


ボーッと考えてると雅ちゃんは少し笑って、


「優奈ちゃんも言ってた。凌ちゃんが侑京くんを好きな事も、侑京くんが凌ちゃんを好きな事もバレバレだ、って…」


そう言った。


……優奈にまでバレてたなんて…。


普段学校では話さないし、LINEだって用事がない限りしない。 たまにお婆ちゃん家で話したりはするけど、本当にそれくらいで…。


「よく見てる、優奈のくせに」


あたしは静かに笑ってみせる。


それはきっと、優奈の長所。周りのことなんて全然見てないように感じるのに、意外と色々な事を見てる優奈。


あたしとは真逆で、本当にすごい。


本人には絶対言えないけど…。


「雅ちゃん、色々ありがとう」


そう言ったあたしに嬉しそうな顔で「どういたしまして」と言ってくれた。