それが君の願いなら。



「――っ!」


屈託のないその笑顔が眩しくて、大好きで。


あたしは自分の想いを自然と口にしていた。


「侑京、大好きだよ」


そう言って笑うと、侑京の顔は赤くなる一方。


首を傾げるといきなり抱き締められ、あたしの肩に顔を埋めてくる。


……変なこと言っちゃった?


心配になり声をかけようとした時。


「………そう言うの禁止つったじゃん…」


耳元で聞こえた声に少し顔をずらせば真っ赤になった侑京がいた。


それはあたしにも伝染してくるんじゃないかって思うほどで。


「ごめんね? 大丈夫?」


そう聞けば顔を埋めたまま、


「全然大丈夫じゃない。本気で凌が可愛すぎて困る」


と言われてしまった。


「かっ、可愛くないもん…」


「可愛いよ。発言も仕草も、笑顔も」


その言葉一つでみるみるうちに赤くなっていくあたしの方こそどうすればいいの…。


「凌」


あたしの肩に埋まっていた顔が、目の前にやってくる。


優しくあたしの頬に触れ、静かに近付いてくる侑京の綺麗な顔。


この世界の時間が止まったかのように静かな時間。


あたしは静かに目を閉じる。


その瞬間触れた、優しくて甘い唇。


目を開けるとまた、涙が一筋零れた。


幸せすぎて死んじゃいそうだよ…。


あたしの涙を拭ってくれる親指は優しくて。


そんな小さな事さえ愛おしく感じる。


「侑京」


「ん?」


「ありがとう」


「うん、俺も」


2人で笑い合って、自然と手を繋いだ。


この優しい手が放れませんように。


解けませんように。


―――誰より幸せだと感じる、16歳の夏。

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